香川県丸亀市の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)が、2027年度に開催する展覧会の予定を公表しました。若手作家の公募展「MIMOCA EYE / ミモカアイ」の第2回、写真家・映画監督の奥山由之による公立美術館初の個展、漆芸作家・中田真裕による美術館での初めての個展、そして画家・猪熊弦一郎が描いた猫に焦点を当てる展覧会が並びます。なお、展覧会の内容や会期などは変更される可能性があります。

36歳以下の作家が集う公募展「第2回 MIMOCA EYE」
年度の幕開けを飾るのは、2027年4月24日(土)から7月19日(月・祝)まで開かれる「第2回 MIMOCA EYE / ミモカアイ」です。MIMOCAは、未来に向けてアーティストが今にないものを見つけ出す「一番大事で一番難しいことの結果を見せる美術館であってほしい」という猪熊弦一郎の言葉を指針としています。この考えのもと、次の時代を担う若いアーティストが新しい表現を生み出し、才能を羽ばたかせる起点として、2022年からこの公募展を実施してきました。
今回は36歳以下のアーティストから現代美術の作品を募り、488人(組)の応募が集まりました。会場では、その中から選ばれた入選作品を、施設改修を経て生まれ変わったMIMOCAで展示します。入選作品からは大賞と選考委員個人賞が選ばれ、大賞を受賞した作家は2028年度または2029年度にMIMOCAで個展を開く予定です。入選作品の発表は2026年11月中旬、大賞と選考委員個人賞の発表は2027年4月23日(金)に予定されています。

奥山由之展、350点超で15年以上の歩みを捉え直す
2027年8月7日(土)から12月5日(日)までは「奥山由之展 大いなる矛盾/視線の行き交い」を開催します。写真と映画を起点に、さまざまなメディアを横断して独自の表現を切り拓いてきた奥山の15年以上にわたる活動を、350点を超える作品で見つめ直す内容です。初期の代表作から現在までを組み立て直す「大いなる矛盾」と、近作の〈flowers〉〈windows〉〈photographs〉の三部作を軸にした「視線の行き交い」という二本立てで構成され、今後の展開を予感させる新作も加わります。
手がかりとなるのは、具象と抽象、現実と虚構、意識と無意識といった相反するものが共存する「矛盾」です。世界を一面的に捉えることへの違和感や、他者との関係を見つめ直す奥山の実践を紹介しながら、スマートフォンやAIで誰もが簡単に画像を生み出せる時代に、写真だからこそできる表現とは何かを問いかけます。奥山は1991年東京生まれ。2011年に第34回写真新世紀優秀賞、2016年に写真集『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞を受賞しました。写真集『flowers』(2021年)、『windows』(2023年)、『photographs』(2026年)などを発表しているほか、映画監督として『アット・ザ・ベンチ』(2024年)、『秒速5センチメートル』(2025年)を手がけています。

冬は漆芸と猫、2つの展覧会が同じ会期で
中田真裕展(仮)
2027年12月18日(土)から2028年4月9日(日)までは、香川で伝統的な漆芸技法「蒟醤(きんま)」を習得し、その表現を追求してきた漆芸作家・中田真裕の、美術館での初めての個展が開かれます。蒟醤は、漆を塗り重ねた面に文様を彫り、色漆を埋めて研ぎ出す技法。中田はこの工程を何層にも重ねて豊かな色彩と奥行きを生み出し、見る角度で表情を変える曲面によって、風や雲、水面といった移ろう自然や記憶の中の風景を表現してきました。新作を中心に、瀬戸内の海や金沢の空など、作家の記憶から生まれた風景を紹介します。中田は1982年北海道生まれで、製薬会社勤務を経て29歳で漆芸の道へ進みました。2019年にはLOEWE FOUNDATION Craft Prizeのファイナリストに選ばれ、金沢21世紀美術館、香川県立ミュージアム、ヴィクトリア&アルバート美術館などに作品が収蔵されています。
猪熊弦一郎と猫
同じ会期で開催されるのが「猪熊弦一郎と猫」です。猪熊弦一郎(1902‒1993)は愛猫家で、戦中から戦後にかけて、多い時には一度に1ダースの猫と暮らしたこともあったといいます。やがて人物像が中心だった作品に猫が登場するようになり、本人は「猫の形と色を今までの人のやらないやり方で描いてみたいと思つた」と記しています。この時期は、猪熊の絵画が具象から抽象へと移り変わる過渡期にあたり、デフォルメを加えたり、幾何学形に分割したり、線だけで簡潔に描いたりと、写実とは異なる独自の表現が見られます。展覧会では、猪熊と猫の関係にも目を向けながら、その「猫表現」を紹介します。

常設展と料金、ニューヨークでの猪熊展も
企画展の会期に合わせて、テーマを設けた常設展も開催し、館が所蔵する猪熊弦一郎の作品を紹介します。観覧料は次のとおりです。
- 企画展:一般1,500円(団体1,200円、市民900円)、大学生1,000円(団体800円、市民600円)
- 常設展:一般300円(団体240円、市民免除)、大学生200円(団体160円、市民免除)
高校生以下または18歳未満の人、丸亀市内在住の65歳以上の人、各種障害者手帳を持つ人(本人と同伴の介護者1名)は観覧料が無料で、来館時に1階受付で証明書類の提示が必要です。市民割引は丸亀市民が対象で、チケット購入時に証明書類を提示する必要があり、他の割引とは併用できません。また、ニューヨークのジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーとMIMOCAの共同企画による「Gen’ichirō Inokuma’s NYC Salon」が同ギャラリーで開幕しました。ニューヨークの美術館では初めてとなる猪熊弦一郎の個展で、1955年に渡米し約20年にわたって拠点としたニューヨーク時代に焦点を当てています。会期は2026年10月6日(火)から2027年1月10日(日)までです。
MIMOCAは丸亀市の市制施行90周年の記念事業として、猪熊弦一郎の全面的な協力のもと1991年11月23日に開館しました。丸亀駅前に建つ建築は谷口吉生によるもので、猪熊本人から寄贈された約2万点の作品を所蔵しています。気軽に立ち寄って良い作品に触れ、心が元気になる場所を目指した猪熊は、美術館のあるべき姿を「美術館は心の病院」という言葉で残しています。