ノーベル賞作家アルベール・カミュの名作『Les Justes〜正義の人々〜』が、2027年3月に上演されることが決まりました。演出は、2025年度の読売演劇大賞で最優秀演出家賞を受賞した稲葉賀恵が務めます。東京公演と大阪公演が行われます。
1905年のロシアの暗殺事件をもとにした革命劇
本作は1949年12月にパリで初演された戯曲です。1905年にロシアで起きたセルゲイ大公暗殺事件から着想を得て、カミュが書き上げました。史実を下敷きに、政治や暴力、そして正義とは何かを問う重厚な作品です。
物語の舞台はロシア帝国です。圧政を打ち倒そうとする若き革命家たちが、権力の象徴である皇帝の叔父・セルゲイ大公を狙い、爆破テロを計画します。大公の馬車に爆弾を投げる役目を担うのは、革命が人々の幸せにつながると信じる詩人のイヴァンです。ところが、いざ爆弾を投げようとした瞬間、馬車に子どもたちが乗っているのを目にし、彼は投げることを断念します。
この決断をめぐり、グループ内では激しい論争が起こります。「大義のためなら子供も殺す」と主張する強硬派のステパンに対し、イヴァンの恋人ドーラは「子供を殺してまで達成される正義はない」と反論します。その後イヴァンは、一人で馬車に乗っていた大公の暗殺に成功しますが、その場で捕らえられ死刑を宣告されます。獄中で大公妃から特赦を申し出られても、彼はそれを拒みます。自らの命を差し出すことで「殺人の罪」を贖い、自分の正義を貫こうとするのですが……。
宣伝を担当するキョードーメディアスは、作品と現代とのつながりにも触れています。先日フランスでは、生活費の高騰などに抗議する大規模なデモが起き、一部が暴徒化して放火や略奪行為が相次ぎ、2000人以上が拘束されました。より良い世界を願いながらも、そのために何をすべきか、何が正しいのかと迷う現代人の姿は、本作の登場人物たちと重なるとしています。
演出は文学座の稲葉賀恵
稲葉賀恵は日本大学芸術学部映画学科監督コースを卒業し、在学中から映像作品などの創作を始めました。2008年に文学座へ入所し、2013年に座員へ昇格。同年4月、文学座アトリエの会『十字軍』で初演出を手がけました。文学座の若手演出家として頭角を現し、現在は文学座以外の舞台でも数多くの作品を手がけています。
2023年には『加担者』(オフィスコットーネ)と『幽霊はここにいる』(PARCOプロデュース)の演出で、第30回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞しました。さらに、翻訳家の一川華と共同で主宰するポウジュの公演『リタの教育』『オレアナ』『Downstate』の演出により、2025年度の読売演劇大賞最優秀演出家賞に輝いています。
これまでに『野鴨』『熱海殺人事件』(文学座アトリエの会)、『誤解』『私の一ヶ月』『ガールズアンドボーイズ』(新国立劇場)、『ブルーストッキングの女たち』(兵庫県立ピッコロ劇団)、『墓場なき死者』『母 MATKA』(オフィスコットーネ)などを演出。近年も『ブレイキング・ザ・コード』(ゴーチ・ブラザーズ)、『音楽劇不思議な国のエロス』(ミックスゾーン)、『リンス・リピート』(ホリプロ)、ミュージカル『ONCE』(東宝)などを手がけています。9月にはシアタートラムで『Yerma』を上演し、12月にはミュージカル『Four minutes』の演出が控えています。
原作者アルベール・カミュ
アルベール・カミュ(1913年~1960年)は仏領アルジェリアの出身です。大学卒業後の1938年にアルジェの新聞記者となり、劇団活動にも取り組みました。1940年に反政府活動を理由にアルジェリアからの退去命令を受けてフランス本土へ渡り、第2次大戦中からは『コンバ』紙の主筆としてレジスタンス運動に加わります。1942年の小説『異邦人』や評論『シーシュポスの神話』などで打ち出した“不条理”の哲学で注目を集め、1947年の小説『ペスト』はベストセラーとなりました。劇作家としても『カリギュラ』『誤解』『戒厳令』、そして本作『正義の人びと』などの戯曲を残しています。1957年に43歳でノーベル文学賞を受賞し、1960年にサンス~パリ間の通称ヴィルブルヴァンで自動車事故により亡くなりました。
公演概要
- タイトル:『Les Justes〜正義の人々~』
- 作:アルベール・カミュ
- 演出:稲葉賀恵
- 公演日程:2027年3月 東京公演 大阪公演
- 公式サイト:lesjustes.net
- 公式SNS(X):@Justesjp
- 主催:Les Justes製作委員会
- 宣伝:キョードーメディアス