塩田武士さんの小説『存在のすべてを』(朝日文庫)が、『読者が選ぶ文庫本「本の日」大賞』で大賞を受賞しました。朝日新聞出版が発表しています。

書店で売れた1冊が「1票」になる文庫本の賞
この賞は、出版業界が取り組む読書推進活動「BOOK MEETS NEXT」の事業の一つです。対象は文庫本で、ノミネートされた10作の中から大賞を決めます。選考では、書店の店頭で売れた1冊を1票として数えます。
このしくみのもとで多くの読者の支持を集め、大賞に選ばれたのが『存在のすべてを』です。
30年前の2児同時誘拐事件と「空白の三年間」
本作は社会派ミステリーです。30年前に起きた2児同時誘拐事件を改めて取材することになった新聞記者を軸に、いまだ解明されていない「空白の三年間」に迫ります。
事件が起きたのは平成3年の神奈川県です。それから30年が経ち、当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「現在」を知ります。事件は未解決のまま異様な展開をたどっていました。その真実を追ってきた刑事たちに求められ、門田は再び30年前の事件と向き合います。そして取材を重ねるうちに、ある写実画家の存在が浮かび上がってきます。
本作はこれまでにも、2024年本屋大賞第3位、第9回渡辺淳一文学賞受賞、本の雑誌が選ぶ2023年度ベスト10第1位など、数々の評価を受けてきました。2027年2月5日(金)には映画の公開も予定されています。監督は瀬々敬久さん、出演は西島秀俊さん、広瀬すずさん、志尊淳さんほか、配給は東映です。
塩田武士さん「私は人間の、そして小説の力を信じています」
受賞を受けて塩田さんは、「記念すべき第一回『本の日大賞』の受賞、とても光栄で嬉しいです」とコメントしました。あわせて、いつも支えてくれる読者や賞の関係者に、心からの感謝を伝えています。
塩田さんは、これから私たちは多くのことをデジタル空間で済ませるようになり、確かな手触りを得られないまま、これまで以上に虚偽と偏見に翻弄されていくと述べました。そのうえで、「そんな不確実な世の中だからこそ、『存在』について考えていただきたいのです」と語っています。さらに、「ただ在ること――それがいかに奇跡的で尊いものなのか。現場に向かい、人々に出会い、全力で『存在』を描きました」と作品に込めた思いを明かし、「私は人間の、そして小説の力を信じています」と締めくくりました。
塩田さんは1979年兵庫県生まれ。関西学院大学を卒業後、神戸新聞社に在籍していた2010年に『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、2011年には第23回将棋ペンクラブ大賞を受賞しました。2016年には『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、同作は「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門で第一位に選ばれています。2019年には『歪んだ波紋』で第44回吉川英治文学新人賞を受賞しました。ほかの著書に『女神のタクト』『崩壊』『騙し絵の牙』『デルタの羊』『朱色の化身』『踊りつかれて』『起点』などがあります。
『存在のすべてを』の特別サイトでは、塩田さんのインタビュー動画を見ることができます。また、著者インタビューや、池上冬樹氏による書評も公開されています。
書籍情報
- 書名:『存在のすべてを』
- 著者:塩田武士
- 出版社:朝日新聞出版
- 発売日:2026年4月7日
- 定価:1,089円(税込)
- ISBN:9784022652317
出典:株式会社朝日新聞出版