保護猫の宿の主人が、自分の宿サイトでの検証を一冊に
「猫と過ごせる里山の宿は?」とAIに尋ねる人が増えています。一方で、専門部署を持たない小さな店や宿には、自分の店がAIにどう伝わっているのかを確かめる手段がありません。千葉県富津市で保護猫20匹と暮らす宿「和心猫治村」(株式会社和心村)の主人・林毅祥(TK Lin)さんは、この課題に自分の宿サイトで取り組んできました。AIが208,683回読みに来たそのサイトで220日間試した「AIへの伝え方」を、書籍『IDAEO:AI時代の市場戦略』にまとめています。本書は4言語で、登録不要・無料で公開されています。
あわせて、10月31日に書名を伏せて本書そのものについてAIに尋ねた結果も公開します。ある1問では本書が挙がりましたが、別の16回では一度も出てきませんでした。公開されるのは、その両方の結果です。
220日間の試行で見えたのは「裏技」ではなく「基本」
AEOやGEOなど、AIに見つけてもらうための整え方は、大企業向けの裏技だと思われがちです。しかし220日間の試行で見えてきたのは、「事実をそろえ、人にも機械にも読める状態で置いておく」という基本でした。AIは回答をつくるとき、その場で店のページを読みに来ます。そのため、ページが読める状態にあるか、事実が明確に書かれているかが伝わり方を左右する、というのが林さんの推論です。
実際に宿では、「保護猫20匹」「11時チェックアウト」といった表記を統一しました。さらに通常の案内ページとは別に、1ページに1つの問いと答えだけを載せた「機械にも読みやすい版」も用意しています。たとえば「チェックアウトは何時?——11時です」「東京からは?——車で約70分です」といった書き方です。
巻末にまとめた「店が今週できる十のこと」
本書では、お客様が来店するまでを10の段階に分け、それぞれに「自分の店はどこで止まっているか」を確かめる問いを置いています。巻末の「店が今週できる十のこと」には、次のような10項目が並びます。
- (1)事実の下書き
- (2)全サイトで同じ書き方をする
- (4)(5)1ページ1問の機械にも読みやすい版
- (9)お客様の言葉で、自分でAIに聞いてみる
一方で、隠し指示や誇張、AIに合わせて事実を書き換えること、1回の結果を鵜呑みにすることは避けるよう記されています。一つの裏技でAIの答えに載りたい人には向かない内容で、あくまで準備のための本であり、成果を保証するものではないとしています。
読みに来るAIの数字と、10月31日の実測
Cloudflareの検証記録によると、宿サイトには8月24日〜10月29日に、人の質問に答えるためのAIが208,683回読みに来ており、読めなかった割合は1.9%でした。月間の読み取り数も、2月の678,259回から6月には30,191,520回に増えています。ただしこれは検索などの自動巡回を含む読み込み数で、回答に表示された数や予約数ではありません。因果関係は断定しておらず、対照群もないと説明されています。なお、旧版に記していた「AIアシスタントの27%が取得失敗」という数字は、全量を再計算した結果、撤回されました。
無料の書店配信がそろった10月31日には、書名を伏せて本書自体を試しています。ChatGPTに繁体字で「有沒有免費的 AEO、GEO 入門書可以推薦?」と尋ねると、挙げられた入門書3冊のうちの1冊に入りました。Googleで「AEO 免費電子書」と検索した際のAI概要でも、最初の1冊として表示されています。ただし、いずれも繁体字で1回尋ねた結果で、尋ねる人や日、言語によって変わるとしています。
同じ日に「小さな民宿がChatGPTに店を挙げてもらうには」という質問を、Gemini、ChatGPT、Grok、Claudeの4つのAIに4言語で計16回尋ねたところ、本書は一度も出てきませんでした。著者自身の本でさえ16回出てこなかったという結果も含め、AIの答えが揺れる過渡期の現在地として、そのまま公開しています。
AIをつくる側から、AIに選ばれる側へ
林さんはADPartnerと、パリのAI企業Botpartnerを創業したのち和心猫治村を開業し、2026年にIDAEOを設立しました。AIをつくる側から、専門部署のない里山の宿としてAIに選ばれる側に立ったからこそ、ツールがなくても店主が自力で確かめられる一冊にしたといいます。林さんは「この2年、宿を探すお客様の入口が変わっていくのを、和心猫治村で感じてきました。自分のサイトで、検索やAIにどう伝わるかを一つずつ試し、確かめるための診断ツールもつくりました。台湾と日本の中小企業の皆さんが使ってくださったことが、この本をまとめる後押しになりました。だから、無料でお渡しします。」とコメントしています。
本書は全9章・図版36点・根拠57件で構成され、登録不要で読めます。ライセンスはCC BY 4.0で、出典を明記すれば転載・改変・商用利用も可能です。毎月改訂され、国立国会図書館にも納入されています。公式サイト(4言語無料)のほか、Apple BooksとKoboでも無料で配信されており、検証の全量データはGitHubで公開されています。
本の舞台となった和心猫治村は、築200年の古民家やツリーハウス、北欧サウナを備えた里山の宿です。「湯治があるなら、猫治があってもいい。」という言葉を掲げていますが、治療や効果を意味するものではないと注記されています。東京から車で約70分、チェックアウトは11時です。
出典:株式会社和心村