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磯野真穂『社会が壊れるその前に』が重版決定 メアリ・ダグラスの古典から読み解く“分断”の時代

磯野真穂『社会が壊れるその前に』が重版決定 メアリ・ダグラスの古典から読み解く“分断”の時代

人類学者・磯野真穂さんの新刊『社会が壊れるその前に メアリ・ダグラスの人類学』(新潮選書)の重版が決まりました。新潮社から9月28日に発売された同書は、発売後に新聞各紙で紹介されて話題となり、書店のジャンル別ランキングでも1位を獲得しています。

磯野真穂『社会が壊れるその前に』が重版決定 メアリ・ダグラスの古典から読み解く“分断”の時代

書店ランキングで1位、新聞各紙でも紹介

同書が1位となったのは、「丸善ジュンク堂書店グループ 選書ジャンル 10/5-10/11」と「くまざわ書店グループ 選書・ライブラリージャンル 9/28-10/4」です。著者の磯野さんは現在、東京科学大学リベラルアーツ研究教育院の教授を務めています。

磯野さんが2019年に宮野真生子さんと共著で刊行した『急に具合が悪くなる』は、濱口竜介監督により映画化され、今年のカンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞しました。こうした経緯もあり、磯野さんはいま大きな注目を集めています。

磯野真穂『社会が壊れるその前に』が重版決定 メアリ・ダグラスの古典から読み解く“分断”の時代

約半世紀前の古典『ナチュラル・シンボル』を現代にアップデート

近年、人類学はビジネスの分野でも注目される学問領域となっています。そうした流れがある一方で、存在自体がほとんど知られていない古典があります。イギリスの人類学者メアリ・ダグラス(1921-2007)による『ナチュラル・シンボル(Natural Symbols)』です。

新潮社は同書を、単なる人類学の古典ではなく、現代社会を読み解く方法論を備えた「予言の書」とも言える一冊だと紹介しています。約半世紀前に書かれた『ナチュラル・シンボル』は、近い将来、苛烈な競争社会や能力資本主義が訪れ、人々の孤独と不安がますます増していくことを警告しています。さらに、一人ひとりに価値を見出そうとする人々と、民族や国家のような大きな存在に救いを求める人々との間で社会が分断されていくことも予測。セカイ系のようなジャンルの誕生や推し活のような現象の広がり、人々が自分の身体を変えることに一層励むようになることまでが仄めかされているといいます。

本書は「象徴」をキーワードに、ダグラスの人類学を現代社会に即した形でアップデートする試みです。現代に蔓延る「孤独」「不安」「競争」とどう向き合うか、そしてより善い社会を作り出すための道筋を示そうとしています。内容紹介では、宗教や儀式の束縛から逃れ、自由で優しくなった現代社会において、それなのになぜ私たちは強い不全感や孤独感に襲われ、終わりのない自己研鑽や社会変革に駆り立てられるのか、なぜ推し活やセカイ系に熱狂するのか、という問いが掲げられています。

「はじめに」全文と第三章冒頭を試し読み公開

本書の「はじめに」全文と第三章冒頭が、試し読みとして初公開されています。「はじめに」は日本国憲法第一章第一条に刻まれた「象徴」という言葉から書き起こされ、象徴の力が働くとき人は論理ではなく情動によって動くこと、善き社会を作りたいのであれば自らがどのような象徴に巻き込まれているかを内省すべきことが語られています。

著者・磯野真穂さんが抱いた「違和感」

刊行にあたり磯野さんは、『急に具合が悪くなる』と、それに続く『他者と生きる』の刊行後に抱いた違和感について語っています。偶然性や境界をなくすこと、複雑性に耐えることなどを讃える本の献本や、そうしたテーマでの依頼が多く寄せられるようになった一方、その中に、分類や境界を設けること自体を問題視したり、現在ある制度を壊しさえすれば、より善い社会が訪れるだろうという素朴な期待や確信が、それなりの数で混じっていたといいます。

磯野さんは、分類し境界を作るふるまいがあるからこそ、そこに収まらない存在が価値を持ち、構造という必然があるからこそ偶然が光を放つと指摘。同様のことを約半世紀前に警告していたのがメアリ・ダグラスであり、ダグラスは象徴という観点から、人間が構造と非構造を行き来しながら社会を存続させてきた過程を、狩猟採集民から産業社会まで横断して解説していると述べています。そのうえで、社会を良くしようとする試みすら社会を悪くしているように感じている人たちに本書が届けば望外の喜びだ、とコメントしています。

磯野さんは長野県安曇野市出身で、専門は文化人類学、医療人類学。2010年に早稲田大学大学院文学研究科で博士(文学)を取得し、早稲田大学文化構想学部助教、国際医療福祉大学大学院准教授を経て、2020年より在野の研究者として活動、2024年より現職です。著書『コロナ禍と出会い直す:不要不急の人類学ノート』(柏書房)で第33回山本七平賞を受賞しています。

  • タイトル:社会が壊れるその前に メアリ・ダグラスの人類学
  • 著者:磯野真穂
  • 発売日:2026年9月28日(月)
  • 造本:新潮選書(四六判変型ソフトカバー)
  • 本体定価:1,980円(税込)
  • ISBN:978-4-10-603953-9

出典:株式会社新潮社

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