株式会社トーハン(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:大西良文)は、小型書店の開業を支援するパッケージ『HONYAL(ホンヤル)』を利用して営業する書店が100店を超えたと発表しました。2024年10月にサービスを始めてから2年での到達です。

小さな本屋を開きやすくする「少額取引」の仕組み
HONYALは、トーハンが小型書店向けに提供している少額取引スキームです。配送頻度や返品率などに一定の制約を設けることで流通の損益分岐点を引き下げ、少額の取引を継続できるようにしています。書店を開業する際に必要だった信認金や連帯保証人も、原則として不要です。
具体的には、配送は週1回で、店主が注文した書籍だけを調達し、返品率は一定以下に収める契約です。その分、従来型のフルラインの取次契約よりも損益分岐点を低く設定できるため、小規模な書店とも継続して取引できるといいます。店頭在庫の冊数は一般的な書店より限られるケースが多くなりますが、在庫の仕入代金や物件の賃借料などにかかる運転資金が比較的軽く済むという利点もあります。在庫は店主の選書によるもので、トーハンは、限られた冊数がかえって店の特色を引き立たせる要素にもなりうるとしています。
2026年10月30日現在、累計の問い合わせは894件で、このうち39都道府県の149店と取引が成約しました。内訳は以下のとおりです。
- 新規開業:80店
- 既存の独立系書店との取引開始:25店
- 上記を合わせた「HONYALを利用し営業中の書店」:105店
- 成約済みでオープン準備中:44店
開店数はおおむね人口の多い都市部が先行しています。一方で、人口10万人当たりで見ると、問い合わせ件数など書店開業の意向にはさほど地域差は見られないとのこと。問い合わせは全47都道府県から寄せられています(開業予定地が決まっている案件のみカウント)。トーハンは、人口10万人当たりの開業数からも、むしろHONYALを活用して地方でも積極的に書店開業に取り組む人が増えている状況にあると言えそうだとしています。

100店目は池ノ上駅前の「LEPO BOOKS」、書店ゼロの町にも新たな本屋
節目の100店目となったのは、東京都世田谷区代沢2-46-5 1階の「LEPO BOOKS(レポブックス)」です。京王井の頭線・池ノ上駅の北口から二軒隣りの路面店で、10月1日にグランドオープンしました。店主は吉岡美帆氏。営業時間は12:00~18:00、定休日は月・火曜日です。店名の「LEPO」はフィンランド語で「ひとやすみ」を意味し、エッセイ、小説、ZINEを中心に、店主が好きな本やおすすめしたい本を一冊ずつ選んで並べています。店内には6席だけの静かな読書スペース「Reading room」があり、購入した本だけでなく自宅で積んでいた本も持ち込んで、コーヒーや焼き菓子とともに読書を楽しめます。吉岡氏は「自分の本棚の延長のように親しみを感じながら、まだ知らない一冊にも出会える。そんな本屋を目指しています」とコメントしています。
HONYALによる開業で、新刊書店がゼロだった状態から抜け出した自治体もあります。
- 北海道南幌町「はれっぱえほん館」:屋内児童遊戯施設の中にできた絵本屋
- 北海道白糠町「こい本」:道の駅のリニューアルに合わせてオープン
- 北海道上士幌町「わたげ書店」:街のアートギャラリーに併設してオープン
- 山形県金山町「かぷりば」:移動式書店として町内や近隣エリアに出店
- 長野県王滝村「王滝書店」:御嶽山登山口の交流拠点にできた山の本屋

データで見る店主像と店のかたち
2026年10月5日現在のデータによると、店主の年代は20代から80代までと幅広く、中心は40~50代で、平均年齢は47歳です。契約時の代表者は男性69%、女性31%ですが、20~30代に限ると女性が48%を占めます。夫を代表としつつ夫妻で協力して運営するケースも多いといいます。内閣府が2026年7月に発行した『令和8年版男女共同参画白書』では「起業家に占める女性の割合は2022年時点で32.3%」とされており、トーハンは、HONYALを利用した書店の開業では若手を中心に他産業をリードする形で女性が活躍している状況が見て取れるとしています。
店主の64%は他の仕事と兼業しています。メディア業界や教職(幼稚園や学習塾も含む)が多く、ほかにも飲食業・サービス業・IT関係など多彩です。また、全体の78%は書店での勤務経験がなく、経験者は22%。契約者の中で最も人数が多い40~50代でも、書店経験者は28%前後にとどまります。
店の形態では、64%が書籍以外のサービスや商材を組み合わせています。複合型のうち45%はカフェ、カレー店、バーなどと融合した書店です。ほかにも、ギャラリースペースを備えたアート系の書店、テーブルゲームを楽しめる書店、学習塾やコワーキングスペース、ミニスーパー、道の駅、登山口の交流拠点や観光案内所の一画をリニューアルした書店などが各地で生まれています。書籍売場の面積は10坪未満の小規模店が全体の78%を占め(10月5日時点の成約書店143店のうち112店)、HONYALを利用した小規模書店は1年前と比べても増えているとのことです。

読書の秋はブックイベントに出展、フリーペーパーも発行
トーハンのHONYALチームは、11月に開催される2つのブックイベントに出展します。11月12日(木)には、文芸評論家・三宅香帆さんと、TBS CROSS DIG with Bloombergの竹下隆一郎さんによる配信番組『Page Turners』のブックイベント「TOKYO BOOK FIGHT」が後楽園ホール(東京都文京区)で開かれ、会場の一角のブースでHONYALの仕組みや利用書店を紹介します。11月21-22日(土・日)には、2026年2月にTBSの主催で初開催された「AKASAKA BOOK STUDIO」の第2回がTBS赤坂BRITZスタジオ(東京都港区)で開催されます。各地の書店が二日間限定のブースを構え、本を愛する著名人が思い入れのある5冊を紹介する「五冊展」などのイベントも予定されており、HONYALも前回に続いて出展します。
あわせて、利用書店を紹介するフリーペーパー『HONYAL図鑑』も制作しました。第一弾の「東京編」では都内で営業中の本屋を取り上げており、さまざまなイベントなどで配布していく予定です。今後は他のエリアでも順次発行する予定としています。
出典:株式会社トーハン