2023年12月読書メーターまとめ

12月の読書メーター
読んだ本の数:32
読んだページ数:9345
ナイス数:824

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)感想
こんな感じは初めてかもしれぬ。どうにもこうにも感想を書きづらくて困ってしまう。第一部、第二部、そしてエピローグという構成。第一部が本書のおそらく9割ぐらいを占めている。私はその長い第一部を終えた後、第二部の序盤で凍りついた。そしてエピローグで「その女アレックス」への期待が高まりました。連続(?)殺人事件を追う主人公とその妻イレーヌ。事件の捜査と私生活とを交互に行き来するうちに、だんだんと不安に駆られてくる。結末を想像できるじゃないか。だってタイトルもそれを示唆しているように見える。でも、それを超えてくる。
読了日:12月31日 著者:ピエール・ルメートル
スクラップ・アンド・ビルドスクラップ・アンド・ビルド感想
又吉直樹氏の「火花」とともに芥川賞を同時受賞した作品。先日、火花は読み終えた。2つの作品の違いを感じてみたくなって、読んでみることにしました。火花同様、タイトルに頭を悩ませまる。もう考えないことにしよう。祖父を介護する孫が主人公。同居する母、つまり祖父の娘は介護に疲れ切っている。ちょっと我が家に近い。この作品の祖父と私の父がだいぶ似ている。話が噛み合わない、すぐぼやく、食べ物にうるさい、合理的な生活を営めない、などなど。でもなんだろうねえ。父とのこれからの付き合い方をまじめに考えるきっかけになりました。
読了日:12月30日 著者:羽田 圭介
図書館の神様 (ちくま文庫)図書館の神様 (ちくま文庫)感想
トイレの神様をなぜか思い出し、どちらの発表が先か気になって調べる。先日、「プロだけが知っている小説の書き方」という本を読みまして。”ほとんどの小説は登場するキャラクターの心の上がり下がりを描くことで表現される、成長物語です。”と書いてあったのを思い出してしまう。それが頭から離れてくれない。本書もそうかもしれないけど、考えないでおこうと思いながら頁をめくる。主人公は高校の女性講師で文芸部の顧問。文芸部の部員はたった1人だけど、この子がとても聡明ですばらしい。成長うんぬんよりも彼の主張大会の発表に胸が震えた。
読了日:12月29日 著者:瀬尾 まいこ
無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記感想
余命4ヶ月。「うまく死ねますように。」の一文。読み進めるのを少しためらった。がんって何なんだろう。がんに苦しめられないですむ。そんな未来がいつかきてほしい。大事な人を失うのは本当につらいけれど、大事な人を置いて先に旅立たねばならなくなることもきっとつらいんだ。120日以上”生きなくちゃ”に、親しい人との分かれを惜しむ気持ちを感じる。内容はほんとに日記です。死ぬ直前まで書き続けた日記。たくさんいろんなことを考えて、人のことを想ってる文緒さんを知ってしまった。私はいち読書人だけれども、さみしくてしょうがない。
読了日:12月28日 著者:山本 文緒
プロだけが知っている小説の書き方プロだけが知っている小説の書き方感想
読むことが好きなら書いてみたらどうだろう。発表さえしなければ傷つくこともないからきっと大丈夫、なはず。なにより、書くことの楽しさや苦悩にも気付けるかもしれない。本書ではじめて小説を書く人の考え方に触れましたが、すぐにでもできそうでかつわかりやすく教えてくれてます。とにかく今すぐスタートを切ってみたい。そんな方の参考になるのではないかと感じました。たくさん読んでたくさん書く。以外にも体力は必要なので体を鍛えておくとなおよし。内容はQ&A形式で短くまとめられているので、気が向いたときにぱらりと開いて読めそう。
読了日:12月27日 著者:森沢明夫
アイネクライネナハトムジークアイネクライネナハトムジーク感想
ナジーム・ハメド。1974年生まれのプロボクサー。漫画「はじめの一歩」に登場する強敵ブライアン・ホークのモデルと言われている。他にも彼をモデルにしたボクシング漫画があった気がするが失念。それはさておき、日本人の悲願(だと私は思っている)ボクシングヘビー級王者の誕生を描くなんて小説とは言えだいぶ興奮しました伊坂さんありがとう。格闘技わりと好きです。王者の栄枯盛衰も、他の登場人物との見えない繋がりもあったおかげで暖かく見守れた気がします。時系列が把握しづらかったりしましたけど、とても気持ちのよい読後感でした。
読了日:12月27日 著者:伊坂 幸太郎
グラスホッパーグラスホッパー感想
最後がよく分からなくて。他の方の感想を見てようやくなるほどと思う。けど、捉え方は人それぞれかもしれませんね。グラスホッパーという題名から「バッタ」の意を持つ登場人物が出てくるかと思ったんだけど、いない。作中、バッタの群生相の話があった。「バッタを倒しにアフリカへ」を思い出す。確か、群れて蝗害(こうがい)を引き起こすバッタの変異のことだったような。群れるとおかしくなる。復讐のつもりが知らぬ間に殺し屋に囲まれた鈴木。これから群生相と変異するのか、孤独相へと帰っていくのか。シリーズ物らしいので他も読んでみたい。
読了日:12月26日 著者:伊坂 幸太郎
GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネスGO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス感想
野生の体を取り戻す。文明的な生活を続けている限りそれを取り戻すことはできないのではないか、と思いながら読む。ならば。私は、野生と文明のハイブリットを目指せばいいんじゃないかと考えた。・・・?具体的なことは何も思いつきませんが、とにかくこの本で取り上げられた食事やら運動やら自分で色々試してみたらいいと思う。低炭水化物食も脂肪恐怖症から脱却することも自然の中で運動することも、自分の中の野生を呼び覚ますきっかけになるかもしれない。試行錯誤の先に野生の体を超えたさらなる進化を遂げる可能性も0ではないんじゃないか。
読了日:12月25日 著者:ジョンJ.レイティ,リチャード・マニング
火のないところに煙は火のないところに煙は感想
最初の仕掛けですごいゾワッとした。夢に出てくるんじゃないかと思った。もうほんとやめて。こういうのは紙媒体だからこそ力を発揮するのかもしれないとしみじみ思う。サーッと読んでてると気付かなかったものがたくさん。最後まとめて締めくくられるので、そこでようやく「あーなるほど」となった。語り手である「私」が著者本人であるというのはとてもリアルな感じがあって気味悪い。洞察力みなぎる人物が登場する。ミステリーだから大丈夫だよと自分をなだめながら読み進める。読後、”読まなきゃよかった”と思わされた本は初めてかもしれない。
読了日:12月24日 著者:芦沢 央
走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)感想
村上氏が走ることについての書物を出していることに正直驚いた。村上氏がマラソンやトライアスロンに参加するような方だとは思いもしなかったんです。読んでみると、もともと地道に走り続ける素質があったように思えます。レースに参加する際は勝ち負けではなく自分が納得いく結果を求めているようだ。氏はこの本をエッセイではなく「メモワール(回想録?)」であると語っている。どういう意味なのかよくわからないけれど、今まで読んだ彼の文章の中で一番わかりやすかった。この本を読むと村上氏はどこにでもいそうな一人の男のように思えてくる。
読了日:12月23日 著者:村上 春樹
ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版感想
ジャック・ダニエルズ。お酒ではない・・ね。氏はトレーニングコーチとして有名であるようだ。しかしちょいとこの本は私には早すぎたかもしれん。走る能力を伸ばす理論とトレーニングプログラムをたくさん収録している。今すぐ実践できなくとも、今後の知識として覚えておきたい。前半はトレーニング理論、後半は種目に応じたトレーニングプログラムの紹介という感じでした。特にマラソンのトレーニングプログラムは初級から上級まで幅広く分けられていて、参考になるところもあったように思える。効率よく練習するためにメニュー設定は必要かも。
読了日:12月22日 著者:ジャック・ダニエルズ
ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング (ブルーバックス)ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング (ブルーバックス)感想
ランニングを始めたつもりだったけど私の走るペースはどうやらジョギングのペースだったことが判明。これからランニングに移行すると考えればピッタリの本だと思った。来年、短い距離のロードレースに出場したいと考えている。副題の”最短で結果を出す科学トレーニング”というのも目標まであまり時間がないのでちょうど良かった。遅めのジョギング「スロージョギング」で効率よくエネルギーを消費。そこへ食事管理も加えながら体重を落とし、パフォーマンスを上げてランニングへと繋げていく。フォアフットでの着地と薄底シューズを推奨している。
読了日:12月21日 著者:田中 宏暁
BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族"BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”感想
ランニングの知識を得ようと思って読んだはずなのに。走る民族タラウマラ族の履き物の説明を見て私は驚くしかなかった。廃タイヤを足形に切り取って靴底とし、それに紐を通して足にくくりつけるサンダルのようなもの。見た目を想像するに「わらじ」だ。そんな薄底ハンドメイドシューズで山岳道を走り抜けていくという。そこに加えて足を日常的にしごき使う生活。人間本来の走る力を引き出した民族タラウマラ族に稀代のランナーたちが挑むノンフィクション。この本も厚底シューズには否定的ですが、未来のシューズはさらに進化する可能性だってある。
読了日:12月20日 著者:クリストファー・マクドゥーガル
火花火花感想
芸人さんの本を読むのは「ホームレス中学生」以来。”芸人さんが書く芸人の話”という前知識はあったものの、内容はまるきり想像できず。読みはじめの薄暗い感じに不安が募りましたが、数ページ後には地獄を抜けていた。私、久しぶりに本読んで笑った気がします。掛け合いが面白くってしょうがない。いや芥川賞受賞だからそういうんじゃないって言われるかもしれませんが、ほんと笑えました。喜怒哀楽に笑いのスパイスが効いている。タイトル「火花」の意味を知りたかったんですが、読み終えた今もわからないままです。笑いたい時にまた読みたいな。
読了日:12月19日 著者:又吉 直樹
最高のランニングのための科学: ケガしない走り方、歩き方最高のランニングのための科学: ケガしない走り方、歩き方感想
ランニングをはじめました。5km前後を走る程度なのですが、ラン後半日ぐらい経つとヒザの外側が痛くなる。消炎鎮痛剤を投下しまくって1,2日で治まるけれど、この状況をなんとかしたい。走ることが楽しくなってきたので痛みをどうにかできれば。「ケガしない走り方、歩き方」という副題に惹かれて本書を選んだ。情報量が多い本で、目的の情報を得る前に結構お腹いっぱいになる。どうやら走るときには人体に備わっているバネを利用すると良いらしい。ケガ予防にも繋がる。著者は厚底シューズには否定的なようで、そこらへんはもう少し調べたい。
読了日:12月18日 著者:マーク ククゼラ
【2022年・第20回「このミステリーがすごい! 大賞」文庫グランプリ受賞作】密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)【2022年・第20回「このミステリーがすごい! 大賞」文庫グランプリ受賞作】密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
ミステリーってやっぱりあれでしょうか、作品数をこなしていくとファッと答えに気づいたりできるものなのでしょうか。まだまだ経験が足りないのかと凹んでしまうほど、私はいまだにトリックに気づけません。もういっそ、わからないほうが楽しめる気がしてきた。騙されて答えを示されて驚嘆する。それが今の私には合っているかもしれないと今作を読んで感じました。それに、本作でのミステリーのトリックや付随する知識などは人と話する際のネタとして有用だなと思った。某ゲームの成歩堂みたいに登場人物の名前が語呂でわかりやすく、工夫を感じた。
読了日:12月17日 著者:鴨崎 暖炉
リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice)リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice)感想
プログラムに興味があるので読んでみたかった本。挿絵がユニークで、内容の理解への助けにもなっているように感じる。変数や関数を自ら定義する際に名前をどう付ければよいか。どう書けば他人が見た時に読みやすいか。などなど、多くの例を見ながら「良いコード、理解しやすいコード」を目指すための考え方を学べる。個人的には「見た目の美しさ」のくだりが刺さったような気がします。”コードを理解しやすくするには、コードをかかないのがいちばんだ”に思わず笑う。でもそうも言ってらんないから、なるべくキレイにまとめられるといいですよね。
読了日:12月16日 著者:Dustin Boswell,Trevor Foucher
食堂かたつむり食堂かたつむり感想
冒頭、祖母の形見のぬか床が出てきたので、もしかしたら祖母とのあれこれが語られるかと思ってました。がしかし予想は大ハズレ。娘ひさしぶりに実家へ帰還。襲いくる豚。鎌を持って娘を追いかける寝起きのおかん。いったい何が起きているんだ。その後やや落ち着いたところでタイトル回収。娘が「食堂かたつむり」を立ち上げる。娘は多くの人を料理で幸せにしていく。食の力って素晴らしい。読みながら作中で出てくる料理を想像すると腹が減ります。自然と生き物、友人、母の愛。良いこともそうでないこともまとめて煮込んで極上スープの出来上がり。
読了日:12月15日 著者:小川 糸
仮面病棟 (実業之日本社文庫)仮面病棟 (実業之日本社文庫)感想
映画を先に観ています。映像化されると原作と異なったものになることが多い。でも本作に関しては違和感はさほどなかっ、、いやあった。原作では、院長先生が中身も見た目も可哀想な男として描かれている。他にも、ふくよかな看護師が。Wikiで情報を見ると、”原作者の知念実希人が脚本に参加している(木村ひさしとの共同執筆)”とある。作者が脚本に関わっていると。もしかしたら。作品のキーとなる数字13。それにちなんで13個ぐらい映画と原作で違いがあるかもしれませんね。それを探しながらまた映画を観る、という楽しみ方もできそう。
読了日:12月14日 著者:知念 実希人
東大教授が教える独学勉強法 (草思社文庫)東大教授が教える独学勉強法 (草思社文庫)感想
”これからは自分の頭で考え、自分自身で判断する力をつけるための勉強が求められる時代になるのです。そしてそのための有効な手段の1つが独学だと私は思っています”。著者は父親の海外勤務の関係で一般的な学生とは違う環境で勉強をしていた。高校には行っておらず、独学の末に今は大学教授という肩書を持つに至っている。これまでの自身の経験から得られた、独学についての知見をまとめたのが本書。ハウツー本というよりはエッセイとして読みました。先に引用した「自分の頭で考え判断する」ということが、いちばんのポイントなると思われます。
読了日:12月13日 著者:柳川 範之
さよなら妖精 (創元推理文庫)さよなら妖精 (創元推理文庫)感想
「わたし、期待します」の一言で、千反田える嬢が頭に浮かぶ。いろんな面で氷菓と似通ったところがあるなと思いながら読んでいました。例えば、重い内容を含んでいる、好奇心旺盛な少女がいる、友人同士で高校生らしからぬ会話をする、そして怠惰を装う切れ者がいる、など。いくつか軽いジャブのような謎解きもある。お墓のくだりはちょいとヒヤリとした。それにしても。先日読んだ「黒牢城」とは違った感じでとまどう。他の作品でもまた違った面を見せてくれるかもしれない、と妙に期待が高まりました。色々読んでみたいと思わせてくれる作家さん。
読了日:12月12日 著者:米澤 穂信
世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2)世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2)感想
こりゃまいったよ。さらりと読めそうな厚さの本にこんなもの仕込むなんて。だからコンパクトなのか。もしかしてこの作品、紙以外で表現できないんじゃないでしょうか。ときにはこういう趣向もいいもんです。よし、もう一回見てみようか。いやあ、まいったなあ(2回目)。これ気付かないまま感想書いたらどうなるんだろうなあ。それ怖いなあ。ああ、そうだ。まだ私が気づいてないものがあるかもしれない。でも、もういいか。作品中で触れられていた京極夏彦先生の本を私まだ読んだこと無いかもしれない。俄然興味が湧いてきたので今度読んでみよう。
読了日:12月11日 著者:杉井 光
心淋し川心淋し川感想
心と書いて「うら」とも読めることを初めて知る。江戸を舞台にした連作短編集。登場人物たちが長屋住まいってえのがポイント。べらんめえ口調な人物もいたりで落語が聞きたくなった。話の中で好きなのは「閨仏」。なんてものに仏さんを彫るんだい。本タイトルからも感じるように寂しい話もある。でもそれを包むように長屋の住人たちは温かい。「せまいながらも楽しい長屋」なんてどこかで見たような見なかったような。最後の近所付き合いがいつだったか久しく思う。温かい環境があったから、終盤のまとめがそれほど淋しく感じなかったように思える。
読了日:12月10日 著者:西條 奈加
「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法感想
”私たちが何か行動を起こすときには、けっこうなお金や時間がかかる。因果関係があるように見えるが、実はそうではない通説を信じて行動してしまうと、期待したような効果が得られないだけではなく、お金や時間まで無駄にしてしまう ”。「データ分析の力 因果関係に迫る思考法」で紹介されていた本書は、因果推論の入門の入門、として書かれている。経済学の前提知識を必要とせず、数式も用いていない。前述「データ分析の力」と似ており、安心して向き合えます。この本で得られた”何となくわかった”感じからもう少し歩を進めてみたいと思う。
読了日:12月09日 著者:中室牧子,津川友介
かがみの孤城かがみの孤城感想
終盤の纏めがあざやかで読み終えた後しばらく余韻に浸っていた。幸せだなあ。厚みのある本でしたので数日かかると思いましたが、読みやすくてあっという間でした。思い返せば欠片は散りばめられていた。早い段階で登場人物たちが共通点だけでなく、真相に近づくことだってあり得たかもしれない。でもそれでもきっとあの結末にたどり着くためには個々の成長が必要だったんじゃないかと思う。他人の幸せを願って勇気を出して踏み出すことができるようになった彼らに私は感服した。ずっと最後まで忘れない方を選んでほしいと願いながら読んでいました。
読了日:12月08日 著者:辻村 深月
インビジブルインビジブル感想
饐えた匂いが漂ってくるような、戦後日本の描写に引き込まれる。治安の悪さが目立っていた頃を背景にした話。大阪で起きた連続殺人事件。物語は二人の刑事を中心に進んでいく。戦後間もない日本の警察機構の有り様に惑い、お互いに反発し合いながらも少しずつ距離を縮めていく二人の刑事。中盤までなぜだか読みづらい。ときおり挟まれる事件と関係無さげな”ある男”の話があったからかもしれない。この男の話は徐々に事件と重なっていく。インビジブルというタイトルで透明人間を思い出すがそれではなかった。見えなかったものが徐々に見えてくる。
読了日:12月07日 著者:坂上 泉
The Number Bias 数字を見たときにぜひ考えてほしいことThe Number Bias 数字を見たときにぜひ考えてほしいこと感想
数字は情報に説得力を持たせることができる。うまく利用すれば人を豊かにする。しかし、人を欺くために使われることもある。ニュースその他情報で数字を見せられたときに、ふと立ち止まって考えることの大切さを学ぶ。幼い頃から数字に慣れ親しんで学び続け、計量経済学・統計学を修めるまでに至った著者。そんな著者でも今だに数字に操られてしまうことがあるという。感情に左右され、利害関係に気付かず、間違った解釈をしてしまう。それに抗うにはどうするればよいのか。それに対し著者は、”知識が究極の解決策”と述べている。知識で自己防衛。
読了日:12月06日 著者:サンヌ・ブラウ
残穢残穢感想
この小説を元にした映画を以前観て、頭が「?」だらけになったのをよく覚えています。不気味なんでわからないまま終わったほうがいいのかもしれませんが再挑戦。着物がぶらぶらはよく覚えている。そしてそして、タイトルの意味がようやくわかりました。なるほどです。ただし穢れについてわかったとは言えない気がする。この作品の中では「伝染」しているように見えた。土地だけならずモノにも伝染るのはやめていただきたい。ねっちょりじんわり来る感じ。住まいを移す際には必ず、お祓いをしようと心に決めました。そういえば。見るだけ聞くだけでも
読了日:12月05日 著者:小野 不由美
つきのふね (角川文庫)つきのふね (角川文庫)感想
さらっと読めました。登場人物の勝田くんが割とおせっかい焼きで胸がざわざわする。でも、何かに踏み出せないときこういう人が背中を押してくれる。たぶんそんな人に憧れているから私の心はざわつくんだろう。勝田くんのような友人がいて欲しいと思う。自分もなるべくなら人を応援できて背中を押してあげられるような人になりたい。最近は手書きの手紙をもらうことが少なくなった。この作品を読み終わったあと、手書きの手紙がないか探してみたら昔のバースデーカードが出てきた。何気ないことばかり書いてある。でもこれ今でもうれしいなあ。尊い。
読了日:12月04日 著者:森 絵都
世界から猫が消えたなら (小学館文庫)世界から猫が消えたなら (小学館文庫)感想
死ぬまでの期限を知ってしまったら自分ならどうするんだろうなあ。何が何でも生き続けようともがく。そんなのちょっとみっともないだろうか。いつ死ぬかを知らないままピンピンコロリがいいのかも。そんなことが頭の中をぐるぐる駆け回る。死ぬということについて考え、死ぬまでにやれることをまじめに考えさせられる本でした。昨日読んだ本も家族について考える本でした。まさか今日もそうなるとは思いませんでしたが、なにかの巡り合わせかもしれないですね。いつ別れの日がくるなんて予想はできないから、こういうきっかけを大事にしなきゃです。
読了日:12月03日 著者:川村 元気
ビタミンF (新潮文庫)ビタミンF (新潮文庫)感想
ビタミンFなんてものは、ない。家族をテーマに描く短編集。私ね、自分の父親のことが嫌いなんですよ。ずっと嫌い。母親が他界し、ずっと男手ひとつで懸命に育ててくれたのに。お互い関わり合うのを避けていた。向こうも同じように嫌いなんだ。そう思ってた。でも家族を持って歳をとった今、ハッとすることがある。今の私、父親と似てる。さてこの短編集、男親のつまはじき加減が胸に来ます。蚊帳の外に置かれてめげそうになる気持ちが切なくてたまりません。なんだか父親を嫌悪するのがためらわれてくる。あれま。そうかこれがビタミンFの効用か。
読了日:12月02日 著者:重松 清
データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)感想
“実践的データ分析に焦点を当てた、計量経済学への超入門書”という位置づけの本書。なんだか難しそうで不安。しかし読まねばならん気がするので読む。すると数式はほぼ出てこない、初めて聞く用語も例と説明で何となく分かる。先の不安はどこへやら。これはいい本に出会えました。他の書籍でたびたび目にしていたRCT(ランダム化比較試験)への理解がやっと一歩進んだように感じる。本書は、統計学・経済学に興味があって少し触れてみたけど挫折気味になってる方にちょうどいい本だと思う。データを正しく見る力も身につけることができるかも。
読了日:12月01日 著者:伊藤 公一朗

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